節税目的で個人事務所の会社を設立すれば、何でも経費にできると思っている人がいます。
しかし、そんなことはなく、つい先日も芸人の脱税ニュースで、私的な洋服代、アクセサリー、旅行代を経費にして税務調査を受けていました。
そこで、小さい会社の経費の流用について、その問題点を紹介します。

個人事業主と違う法人の経費の流用
会社の経費を個人的に流用する扱いは、個人事業主と会社(法人)とでは少し違います。
個人事業主は、通帳を家庭用と事業用に分ける義務はなく、事業用の通帳から個人的な生活費や交際費を支払っても問題ありません。
これは、個人事業主が、家庭生活の中で事業をしているという考え方があるからです。
そのため、事業用の通帳から個人的な旅行代を支出しても、「事業主貸」勘定で処理すれば、問題ありません。※経費にすると問題です。
一方法人の目的は、公益法人を除き営利目的を前提としているため、通帳など会社から支払うものは、事業目的を前提として、個人的な支出はそもそも前提としていません。
そのため、個人事業主のように「事業主貸」勘定が法人にはありません。
会社の経費の流用は役員賞与
会社の資金を個人的に流用し、それを経費とした場合は利益が圧縮されるため、税金は減ります。
しかしそれは、当然禁止されているため、税務調査等で否認されると、流用した経費は、使い込んだ役員(代表取締役)への賞与として処理されます。これを認定賞与と言ったりします。
役員賞与は、法人税の計算では、事前に金額と時期を届出ておく必要があるため、経費の流用と言ったイレギュラーな支出は、賞与として処理しても経費として認められません。
そのため、利益が増え、同じように法人税も増えて追徴課税になります。
さらに、流用した経費の消費税も否認される場合は、消費税も追徴課税されます。
これらの追徴課税には、納税が遅れたことによる延滞税、罰金に相当する加算税や、悪質な場合に課される重加算税も追加して支払います。
さらに認定賞与の怖いところは、給与として処理されるため、給与に対する所得税も課されるところです。
会社の経費を流用して認定賞与として処理されると、法人税、消費税、所得税のトリプルパンチとなり、さらに罰金と踏んだり蹴ったりです。
普通に納税するよりも多く税金を払うため、絶対に後悔すること必至です。
会社の経費を流用した場合の対策
会社の資金については、営利を目的とした事業用であることを肝に銘じて、事業の支出に限定し、個人的な支出をしないことが重要です。
個人的な支出は、正当に支出した役員報酬から支出すれば問題ありません。
それでも、会社の経費を流用してしまったら、「立替金」や「役員貸付金」勘定で処理し、後日通帳に入金して精算することで対策できます。
なお、「立替金」や「役員貸付金」がそのまま残っていると、利息の計上が必要だと指摘されたり、融資の際に問題になる可能性があるので、放置せず早めに精算することが重要です。
終わりに。芸能人の顧問税理士はストレス多そう
芸能人の脱税のニュースを見ていたら、SNSで税理士の責任云々が問われていて気の毒に思っちゃいました。
芸能人の経費の判断は曖昧な部分が多そうだし、そもそも経費は社長が判断するものなので、税理士の問題以前のところだと思っています。
社長がこれは経費だと言えば、問題点は指摘しても、完璧に否定できないものだし、芸能人は我が強い人が多そうで、自分には芸能人の顧問税理士はストレスで務まらなさそうです。