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消費税10%増税前の駆け込み法人成りをオススメしない理由

投稿日 : 2019年8月5日 / 更新日 : 2019年8月5日

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よく受ける税金相談のひとつに、確定申告をしていた個人事業主が、消費税の対策として、法人成り(組織形態を法人にすること)したい。というものです。
2019年10月から始まる消費税率の10%への増税を前に、この手の相談を受けることも増えました。
しかし、税理士としては、安易な法人成りはオススメしていません。今回はその理由を紹介します。

法人成りして消費税の免税事業者をもう一回

法人成りして消費税対策をする理由は、消費税の免税事業者だと思います。
個人事業主として開業したときには、2年間の免税事業者という恩恵を受けたので、それを法人成りしてもう一回受けようという考えです。
もちろん、国税も抜け道を作らないために、新設法人や特定期間などの対策をしているので注意が必要です。
それでも、条件を満たせば、免税事業者になるため、法人成りを検討する人は多くいます。

法人の義務と規則をちゃんと考えていますか?

組織を法人にすることは、権利(メリット)とともに、義務(デメリット)も当然発生します。
それなのに、消費税というワン・イシューだけで、決めてしまってよいのでしょうか。他にももっと理念や成長性など、やや抽象的ですが根本的な信念が必要だと思うのです。
以下、いくつか法人成りしたときの義務(デメリット)を紹介します。

社会保険の加入義務と保険料の労使折半

法人になると、社会保険(健康保険や厚生年金)への加入が義務付けられます。
これは、従業員が5人未満でも、社長だけのひとり会社でも同じです。
そして、社会保険に加入した被保険者の社会保険料は、会社が半分負担します。(労使折半)
個人事業主であれば、労働保険料だけの負担だったものが、法人になると、年金と健康保険も半分負担となります。
規模拡大を前提として法人成りするなら問題ありませんが、節税を前提として法人成りするなら、これは本末転倒ではないでしょうか。

自由に下げられない定期同額給与の役員報酬

個人事業主は、事業の最終的な利益が自分の給与という考えですが、法人になると、自分も従業員(建前は役員ですが)として役員報酬を受け取る立場になります。
自分に給与を出せてしかも経費になるので、法人成りのメリットとして言われますが、これが厄介で法人税法の規定(2019年8月時点)で、役員報酬は、基本的に1年間は同じ金額に設定し、金額を変動することは利益操作になるので原則できないルールです。(定期同額給与)

事業拡大の中で法人成りすれば問題ありませんが、事業がうまく行かず資金繰りが悪化すると、節税目的で高く設定した役員報酬が、逆に重しになることがあります。
もちろん、法人税法でも、著しい業績の悪化であれば、役員報酬の減額は認められますが、少し売上が落ちた程度では認められないのがルールです。

登記費用や税務申告報酬などの周辺コスト

法人成りするには、設立登記が必要となります。手続きが簡単になったとは言え、自分でできるほど専門的知識も時間もない人は司法書士に頼むことになり、株式会社なら25万円以上の費用が必要となります。
また、法人の役員は定期的に、役員変更登記が必要になり、忘れると罰則もあるため、そのたびに司法書士に頼むことになります。

税務申告も、個人事業主の確定申告よりも、法人の申告書の方がはるかに煩雑になるため、税理士報酬が高くなるはずです。

節税を目的としていたのに、法人にすることで逆に管理費用が増えてしまうことになりかねません。

消費税対策だけの法人成りはオススメしない

消費税増税前に、法人成りの相談が増えたことに対する、税理士なりのリスク管理を紹介しました。

税理士や会計事務所の中には、顧問料が増えるので、安易に法人成りを勧めたり、所得の分散だからと言い、複数の法人を設立させるケースもありますが、僕はオススメしていません。

法人成りするからには、法人を大事に育てる理念や覚悟が必要だと思います。
安易に法人成りすると、後でこんなはずでは、と後悔することもありえますから。

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