法人税の計算では、業績が良く税金を納めた年の翌年は、あらかじめ税金の一部を前払いします。
これを『予定納税』と呼びます。(前年が赤字だったり、黒字でも税金が少ないと予定納税の必要はありません。)
そんな予定納税ですが、よくある質問のひとつに『業績が落ちて予定納税が払えない』というものがあります。
予定納税の額は、基本的に前年の法人税の2分の1となるため、業績が悪く資金繰りが悪化すると、その2分の1でさえも払えないことがあります。
そんなときの対処方法として『仮決算による中間申告』というものがあります。
この方法は手間がかかるのがデメリットですが、予定納税の額を減らせる可能性があります。
そこで、同族会社や中小企業の社長のために、業績悪化で予定納税が払えないときの対処法として『仮決算による中間申告』について紹介します。
予定納税の原則
普通法人の法人税の計算では、前年の法人税の額が20万円を超えると、翌年は予定納税が必要となります。
なお、法人税の予定納税が必要な法人は、法人都民税など地方税についても予定納税が必要となります。
予定納税の計算は、『前年の法人税の額×12分の6』つまり半分を納めることになります。
実務上は、税務署や市区町村から、予定納税の額を記載した納付書が送られてくるので計算は不要です。
また、郵送物の中に申告書も同封されていますが、納付書の通り税金を納めれば、申告する必要はありません。
予定納税の期限は、事業年度の開始日から6月を経過した日から2ヶ月以内です。
例えば、3月決算法人だと、9月までの予定納税額を11月に納めることになります。
税金を滞納すると、延滞税が発生することもあるので、忘れずに納めましょう。
[参考ページ]
引用│国税庁ホームページ
仮決算による中間申告が有効な場合
さて、ここまでが通常の予定納税ですが、例外として仮決算による中間決算という方法が認められています。
事業年度開始の日から6ヶ月間を一事業年度みなして、そこまでで仮決算して税金を計算する方法です。
仮決算であれば前年の法人税の影響を受けずに、法人税の計算ができます。
仮決算が有効な場合としては、有価証券や不動産を売却してその年だけ税金が多くなったときの翌年。
何らかの理由で業績が悪化して資金繰りが著しく悪化した年。などが考えられます。
同族会社の中小企業では、取引先の倒産や、社長の病気やケガで、資金繰りが悪化することは珍しくありません。
仮決算の計算方法
仮決算の計算方法は、毎年行う通常の決算作業と基本同じです。ただし計算期間が6ヶ月に短縮されます。
決算時に貸倒引当金や減価償却費を計上しているのであれば、仮決算でも計上します。
ただし、減価償却費や交際費の損金算入限度額は、12ヶ月ではなく6ヶ月で計算するので注意しましょう。
また、申告書も通常通り作成するため、決算書や内訳書、概況書など添付書類の作成も必要です。
仮決算のメリットとデメリット
仮決算のメリットは、前年の法人税に影響を受けないため、納税額を少なくできる可能性があります。
業績が悪化して資金繰りが苦しいときには、仮決算が有効な手段となります。
ただしデメリットとして、通常の決算作業と申告書の作成・提出が必要なため、手間が多くなります。
まとめ:業績が悪化したら中間決算
業績の悪化で予定納税が払えないときの対処法として、仮決算による中間申告を紹介しました。
通常の予定納税ができれば問題ありません。しかし、経営状態が悪化しない保証はどこにもありません。
そんなリスクのために、仮決算という方法があることだけでも知っておくと良いかもしれません。
