事業を経営している人は、源泉税の基本を理解しているでしょうか?
もしかして単純な値引きだと思っていませんか?
源泉税とは正確には源泉所得税と言い、納税者に代わって支払う税金のことです。(値引きじゃありません!)
給与や報酬を支払っている事業主は源泉徴収義務者といって、必ず知っていなければいけない知識です。
そこで美容室や飲食店を小さなお店を開業したばかりの人のために、源泉税の基本を紹介します。
なお、この記事は基本だけですが、詳しくは国税庁ホームページで確認できます。(国税庁HP)
源泉税とは
源泉税とは、本来の納税者に代わって、支払った側(事業主)が納税する税金です。
正確には源泉所得税※と言いますが、長いので省略して源泉税と呼ばれています。
※平成25年からは、源泉所得税に復興特別所得税も含めて徴収されます。
本来、所得税は自分で確定申告書を作成して、自分で納税をします。「申告納税制度」
しかし源泉税は、給与や原稿料、税理士報酬など一定の支払いについて、支払う側が支払金額から税金をあらかじめ天引きして、その後に支払い側が本人に代わって納税します。「源泉徴収制度」
源泉税の対象
源泉税の徴収となる支払いはいくつもあります。
しかし、美容室や飲食店など小規模な個人事業主であれば、次の支払いに注意が必要です。
・ 給与、退職金
・ 税理士や社労士など士業への報酬
・ 原稿料や講演料の報酬
この他にも、芸能人やスポーツ選手への報酬、馬主が受け取る競馬の賞金などがありますが、あまり登場する機会はありません。
経営者は普段と違う特殊な支払いが必要なときに、源泉税の対象となるか確認すれば、ほぼ問題になりません。
源泉税の計算
源泉税の計算は、支払う内容によって異なります。
給与であれば、扶養人数や支払額、年度によって異なるため、その年の源泉徴収税額表で確認します。
報酬であれば、10.21%(※平成29年12月時点)の税率で計算します。
ただし、支払先や支払額によって税率や計算方法が変化します。
実際の経営では、報酬に関しては支払先が発行した請求書を見て支払うことになります。
そのため、事業主は源泉税の計算をする必要はなく、計算を間違うことはないと思います。
それよりも従業員がいる事業主であれば、源泉徴収税額表の見方や、従業員の扶養人数を確認することが必要です。
源泉税の納付
源泉税の納期には2つのパターンがあります。
原則は、給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納付書を書いて納付する方法です。
納付書は最寄りの税務署でもらえます。
最近では、イータックスを使って、電子申告してクレジットカードで納付することもできます。
もう一つのパターンは、「納期の特例」という届け出をして承認を受けている場合で、納税を年2回にまとめることができます。
納期は、1月から6月分までが7月10日、7月から12月分までは翌年の1月20日です。
こちらも、手書きに代えて、電子申告とクレジットカード納付にすることができます。(う~ん便利な世の中!)
源泉税の仕訳
給与や報酬から源泉税を天引きして支払うと、本来の支払額よりも少なくなります。
本来であれば、[給与/預金 100円]や[支払報酬/預金 100円]となるところが、[給与/預金 90円]や[支払報酬/預金 90円]と少し減ります。※金額は適当です。
そこで、源泉税を帳簿に反映させる一番簡単な方法として、もう一つ仕訳を追加する方法があります。
天引きした源泉税は、「預り金」という負債の勘定科目を使います。
仕訳で表すと、上記仕訳に[給与/預り金 10円][支払報酬/預り金 10円]という源泉税の仕訳を追加します。
このように入力することで、給与や報酬は天引き前の金額が経費となり、源泉税の残高も預り金として確認できます。
この他にも「諸口」という勘定科目を使う方法もありますが、経理初心者には難しいので省略します。
法定調書合計表で報告
従業員がいる事業主は、10月から11月頃に税務署から年末調整の書類が郵送される思います。(納付書も同封されています。)
この書類には、年末調整の資料の他に、法定調書合計表も同封されています。
法定調書合計表とは、1年間に支払った給与や報酬、家賃などの合計額をまとめて税務署に報告するものです。
提出期限は翌年の1月末日のため、それまでに支払額をまとめておく必要があります。
事業主は、源泉税の納付、そして法定調書合計表の提出をするために、毎月の経理処理がとても重要です。
経理を忘れていると、年末調整も源泉税の納付も、法定調書合計表の提出もできません。
まとめ:知らないでは済まされない源泉税
飲食店や美容室など開業したばかりの人のために、源泉税の基本について紹介しました。
この記事を読んでもらえれば、源泉税が単なる値引きではなく、一時的に預かっている税金だと分かってもらえたと思います。そして経理の重要性も。
源泉徴収は義務のため、事業主は源泉徴収を忘れると、源泉徴収義務違反となり税務署から指摘されることもあります。(罰則もあります)
法人でも個人事業主でも、経営者の立場であれば、源泉徴収は必ず必要となります。
特にこれから開業する人は、源泉徴収される立場からする立場に変わるため、しっかりと押さえておきましょう。
