芸人に限らず芸能人は有名になると、所属していた芸能事務所から独立して個人事務所を設立します。
個人事務所を設立する理由は、節税が大きな理由ですが、その仕組は複雑で分かりづらいので、簡単に解説してみます。

法人税と所得税の税率の差で節税
個人事務所を法人として設立することで、収入に対して課税される税金の種類が「所得税」から「法人税」に変わります。
所得税は、所得が上がるほど税率も上がる超過累進税率となっていて、税率は5%~45%と幅があります。
一方法人税は、所得が増えても約28%(中小企業の実効税率)と一定になっているため、所得が一定時点を超えると有利となる税率が逆転し、個人事務所にしたほうが節税になることになります。
芸能人はこの税率の差に注目して、個人事務所を設立して法人の収入にすることで税金を下げる仕組みを利用しています。
なお、この税率の差を利用した節税は、国際間でやるとタックスヘイブンと言われ、国内で行う個人事務所節税より複雑です。
自分や親族に給与を支給して所得を分散
もう一つ個人事務所にすることで節税できるメリットは、自分や親族に対して給与を支給して所得を分散できることです。
法人税の計算では、代表者である自分や役員の親族に給与を支給しても、高すぎる場合を除いて経費になり問題はありません。
当然給与も経費なので、利益が減る分だけ法人税も減ることになります。
また、給与に対して課税される所得税も、給与所得控除という「みなし経費」を控除して所得税の税率が課税されるため、所得を分散するほど節税になります。
もちろん高すぎる役員報酬や、労働実態のない人に対する給与は、税務調査で否認されるリスクがあります。
個人事務所のデメリット
個人事務所の節税としてのメリットを紹介しましたが、当然デメリットもあります。
まず、所得税の確定申告よりも、法人の決算・確定申告は複雑で難しくなることです。毎年帳簿を作成し、決算申告することは、税理士の専門的な知識がなければ難しいと思います。
次に、個人事務所としての法人の設立を司法書士に依頼すると、20万円から30万円の初期費用が必要になります。(所得税なら0円で始められる)
また、所得税は赤字なら税金は発生しませんが、法人としての個人事務所は、赤字でも毎年7万円の均等割という税金が発生します。
自分を含め従業員に給与を支給する場合は、源泉所得税を天引きし、集計した上で、給与所得者に代わって納税し、年末には年末調整もしなければなりません。
さらに、社会保険の加入義務が生じて、会社自身で自分を含めた従業員の厚生年金と健康保険の加入手続きが必要となります。
そのうえで、毎月の社会保険料の納付と、原則年一回の定時改定の届け出が必要となります。
以前は、社会保険に未加入の法人も多かったですが、最近はチェックが厳しくなり加入していない会社に対する罰則もあります。
個人事務所の運営管理は一人では難しい
個人事務所の節税としてのメリットと、反対のデメリットを紹介しました。
個人的な意見を言えば、個人事業主は税率の低い国を利用するタックスヘイブンと似ているので好きではありませんが、今のところ合法なので問題ありあません。
しかし、個人事務所の運営管理は手続きが難しく、税理士や司法書士、社労士のサポートなしでは難しいのが現実です。
始めてみてわかる手続きの難しさを知り、給料をもらっているだけのほうが簡単で楽だったなと思い、個人事業主に戻る人もいるほどです。
かと言って、難しい手続きや納税を放置していると、芸能人として知名度がある分だけ、追徴税額や罰金だけでなく、マスコミやSNSによる社会的制裁のリスクも有ることに注意する必要があります。
最後に『シェア』のお願い
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 少しでも興味が湧いたり、おもしろいと思ったらの『シェア』ボタンを押してください。(ボタンは記事下部にあります↓) 優良なコンテンツを書き続けるために頑張りますので、興味のある記事を読んで頂けると幸いです。