今さらながらピケティ著『21世紀の資本』を読んでみました。
いざ読んでみると長くてしかも難しいので、目次を見て興味のあるところを読んだだけですが、それなりに楽しめました。
特に、労働よりも資本から生み出される富の方が効率が良く、このままでは労働者よりも資本家が豊かになるため、保有する資本に対して累進課税する累進資本税を推奨しているところが面白かったです。
そこで、ピケティさんの累進資本税が日本で導入できるかについて考えてみました。

世界規模の累進資本税
導入部分で紹介したとおり、資本家が保有する株などの有価証券や、土地・家屋という不動産、そして企業という資産から生み出される富や財は、労働者が労働をして得る賃金よりも遥かに大きい。と言っています。
かつては、戦争や恐慌などのイベント?によって資本の平均化がされていたのに、現在はそういったイベントがなく資本家と労働者の格差が拡大する一方と言っています。なるほどN自動車のCゴーンを見ていると納得です。
しかもピケティ氏は、今の税制では資本家は、痛くも痒くもないということです。
資本から生み出される利益に対して課税しても、それ以上の利益が日々生まれるため、資本全体からしたら微々たる税金でしかないようです。
対して労働者に対する税金は、保有する資本が少ないため、資本に対する税金の比率が高く負担が大きいということです。
なるほど、たしかに少ない預貯金から所得税や消費税を負担し、さらにバカ高い健康保険料や年金保険料を負担したら、貯金なんてできないどころか減っていきそうです。
そこでピケティ氏は、利益に対してではなく、課税した後の資本に対して課税しようと言っています。しかもケイマン諸島などのタックスヘイブンやスイス銀行による秘匿性を廃し、世界規模で預貯金や不動産、有価証券の開示をして課税しようというものです。
なるほど、脱税できなくて良い案だけど、現実的な反対やハードルは高そう。
Cゴーンからは、自分の金は絶対に使わないという強い意志が感じられますし。
日本で資本税を導入できるのか
日本では、土地・家屋に対しては固定資産税が課税され、業務用の資産には償却資産税が課税されています。
しかし、基本的には利益に対する課税だけで、利益を課税した後の資産は課税されることはありません。例外的に、相続税は最終的な課税されますが。
そんな日本で、資本税が導入できるか考えてみましたが、結果的には難しいと思います。理由は2つです。
1つ目は、日本だけで導入しても、SバンクのS正義など超富裕層は、海外に資産を移すことが容易なため、世界規模で導入しないと抜け道ができてしまいます。
2つ目は、自民党が政権であるうちは、金持ちを優遇しない政策なんて実現しないからです。自民党の支持基盤は経団連など富裕層だからです。
もし、日本で資本税を導入するなら、マイナンバーで預貯金や不動産、有価証券などすべてを紐づけする必要があります。
そのためには、マイナンバーを普及させる必要がありますが、現状では難しいようです。
普及させるなら、所得控除や税額控除にマイナンバー控除とか作ればいいのに、なぜそんな簡単なこともしないのか不思議です。
確定申告の財産債務調書の罰則
日本でも、一定額以上の所得がある人の確定申告書には、保有する資産と債務を記載する財産債務調書の提出が必要となっています。
しかしこれは、直接課税に使うわけではなく、国税庁の中で富裕層をリストアップし管理するのに使っているようです。
そのため、記載に間違いがあっても加算税があるわけでもなく、提出が遅れたからと言って延滞税があるわけではありません。