個人事業から法人成りすると、社会保険(厚生年金、健康保険)への加入義務が生じます。
よくある勘違いで、5人未満は加入義務はないよ。というは個人事業のことで、法人だと社長一人だけの会社でも加入義務があります。
最近は行政官庁の監視が厳しくなり、社会保険の未加入や未納は許されなくなり、会社負担は重くなっています。
そこで社長一人の会社だと、少しでも負担を減らそうと、自分の役員報酬をなくす対策をする人もいます。
ですが、社会保険料は最低ランクでも数万円の負担が生じる仕組みとなっています。
社会保険は労使折半で半分は給与から天引きしますが、役員報酬ゼロだと天引さえできできません。
そこで、一人会社で役員報酬なしの場合の、社会保険料の仕訳を考えてみました。
※この記事は、考察に基づくもので、この記事から生じる損害については負担できません。
社長貸付金とする場合
役員報酬がなくても、毎月発生する社会保険料のうち、労使折半の個人負担部分を役員貸付金(社長貸付金)とする方法が考えられます。
仕訳としては、次のようになります。※金額は概算です。
社長貸付金 11,000 / 預金 11,000
法定福利費 11,000 / 預金 11,000
社長貸付金は、帳簿上は資産勘定なので、社長自身から返済されるまでは帳簿にずっと残ることになります。
しかも、法人は営利活動を前提としているため、貸付に対しては社長自身に対するものでも、利息を取らなければなりません。
会社の立場からすると、個人負担分は一時的に立て替えたから返済してね。というスタンスになります。
会社の経費にする場合
上記と違う考え方として、会社が個人負担分も含めて、全額負担するよ。というスタンスを取ると、個人負担分は経済的利益として給与となると思います。
仕訳としては、次のように1本の仕訳になります。※金額は概算です。
給与 11,000 / 預金 11,000
法定福利費 11,000 / 預金 11,000
給与は所得税の課税対象となりますが、少額なので甲欄であれば源泉税の天引きはありません。
(乙欄だと源泉徴収税額あり)
ですがどちらにしても、会社としては経費となるため、個人負担分を社長に請求することはできません。
余談:なぜ社会保険料なしのランクがないのか
ところで、なぜ社会保険料は給与がゼロでも支払い義務があるのか。というところに疑問が生じます。
同じように給与から天引きされる源泉所得税は、甲欄の最低ランクはだと0円のため、少額の給与だと源泉税を天引きする必要がありません。
これを考えると、社会保険料が低所得者からも徴収しようとする姿勢が見えます。