葉室麟『散り椿』を読みました。
同氏の作品は銀漢の賦や蛍草を読んでいて、とても爽やかな作風というイメージですが。
本作も爽やかで気持ちのいい作品でした。
岡田准一主演で映画化されるのでおすすめです。
あらすじと感想
かつて藩の剣術道場で実力者だった新兵衛は、藩の不正を訴え、逆に藩を追放され浪人をしていた。
18年後、親兵衛の妻が病気で亡くなり、妻の遺言で親兵衛は藩に戻ってくる。
18年を経過した藩では、かつての道場仲間で親友の采女が、家老と派閥争いを繰り広げていた。
親兵衛そして、亡き妻の妹や甥っ子は、藩の政争に否応なく巻き込まれていく。
感想としては、いつの時代も既得権益を守ろうとする人と、誠実に生きようとする人の対立は、なくならない。と確認できます。
逆にそれが人間らしいのかもしれませんが、損をするのはいつも下っ端の人間だし、誠実に生きようとする人の方なのが歯がゆいところです。
主人公の親兵衛は誠実に生きようとする人であり、しかし誠実に生きることで周りを不幸にしてしまうことに悩む人です。
主人公の人柄が素晴らしく、背景描写や文章もきれいで、起承転結もスッキリしていて読後感が爽やかな作品です。
藤沢周平や葉室麟など時代小説を読むと、日本語の美しさや日本人の美徳を再確認できます。