ここ数年で、業務委託契約に切り替えたので、確定申告をしてください。という相談が増えた気がします。
その背景には、従業員を雇用契約から業務委託契約に切り替える企業が増えているのかもしれません。
しかし、税金の計算だと、業務委託契約にすると税額が増えることがあり、そのことを理解しないままに契約を切り替えている人がいます。
計算方法が所得によって違う
所得税の計算では、所得の区分を10種類に分けて、それぞれ計算して最終的に合算して所得税となります。
雇用契約で会社から受け取るのは『給与所得』ですが、業務委託契約になると『事業所得』になります。(副業だと『雑所得』かもしれませんが)
この2つの大きな違いは『経費』の考え方です。どちらも収入から経費(と所得控除)を引いた後の課税所得に税率を乗じますが、給与所得の経費が計算式に当てはめる概算経費なのに対して、事業所得は実際に発生した実額になる点です。
意外と多い給与所得控除
給与所得の経費のことを『給与所得控除』と言いますが、給与収入に比例して増え最低でも65万円あります。(平成30年時点)
例えば、平成30年だと給与収入500万円の給与所得控除は154万円になります。
(タックスアンサー№1410より)
年収500万円のサラリーマンが、実際に収入に紐付けられる経費(電車代など)の領収証を集計しても、154万円にはならないはずです。
そんな人が、雇用契約から業務委託契約にすると、実際に支払った経費しか認められないため、減少した経費の分だけ税金も増えることになります。
給与所得控除の改正
このように、サラリーマンの給与所得は、実際の経費と乖離して、とても優遇されています。
そのため、これを問題視して、給与所得控除を減らすという改正がされました。
2020年からは給与所得控除が一律10万円減少し、さらに年収850万円までで上限額が195万円に引き下げられます。
ただし、基礎控除が10万円上がるため、実質的にはハイクラスサラリーマンに対する増税になります。
業務委託契約のその他のデメリット
その他に、雇用契約から業務委託契約になるデメリットには、今まで会社が源泉徴収し年末調整で終わっていた税金の計算を、自分で収入と経費を集計して確定申告する義務が生じる点です。
また、社会保険も労使折半で会社が半分負担してくれていた厚生年金や健康保険も、すべて自己負担になります。
まとめ
雇用契約から業務委託契約にすることで、税金や社会保険で損をする可能性があることを紹介しました。
会社としては、労使折半だった法定福利費が削減でき、源泉徴収や年末調整などの事務負担も減ります。
従業員にとっても手取り額が増え、なんとなく得をした気分になりますが、全体で見ると損をしているケースがあります。
日本のシステムはサラリーマンに優しい。ということに意外と多くの人が気づいていないのかもしれません。