大沢在昌の『海と月の迷路』を読みました。
今は観光地となっている軍艦島を舞台にしたミステリー小説です。
小説の中ではN県H島と表記されていますが、これが長崎県の軍艦島(端島)であることは誰でもわかります。
上下巻の長編小説ですが、テンポが良くサクサク読めて楽しめました。
吉川英治文学賞の受賞作です。
あらすじ&感想
新人警察官である荒巻は、炭鉱の島である軍艦島の派出所に配置される。
軍艦島では、わずかな面積に鉱員だけでなく、その家族や教師、医師など合わせて5千人ほどの人が暮らしている。
そのため、警察だけですべてを管理することはできず、炭鉱会社の社員が「全島一家族」のルールのもとで独自の自治を行っていた。
そんな中で、ひとりの少女が行方不明になり、翌日に水死体となって発見される。
新人警察官の荒巻は、事故として処理されたことに不審を抱くが、波風を立てたくない先輩警察官や炭鉱会社からの反発を受け孤立することになる。
しかし荒巻は、四面楚歌の中で、秘密裏に捜査を進め、協力者を得て少しずつ真相へと近づいていく。
感想は、ミステリー小説としても面白いですが、何と言っても今は廃墟と化した軍艦島をリアルに感じられ、実際に歩いているような感覚になることがすごいと思いました。
何千人という人が暮らしていて、定食屋や居酒屋、学校や商店、銭湯があり、さらに映画館まであったというから驚きです。
実際の人々の暮らしは想像するしかありませんが、小説を読むと暮らしぶりをリアルに感じられます。
今は上陸できるツアーがくまれれているようなので、行ってみて感じてみたいと思いました。
ちなみに、現実には事件はなかったようです。まぁ小さい事件はしょっちゅう起きていたのだろうと想像はできますが。