事業計画書を作っていて、ふと「これ本当に実現できるのか?」そんなことを思うことがあります。
ここ5年くらいで経産省や中小企業庁では、認定支援機関(ほとんどが税理士)が中心となって中小企業の事業計画書の作成を促進しています。
国から事業計画書の認定を受けることで、税金の免除や融資などのメリットがありますが、その背景には、中小企業にも行き当たりばったりの経営ではなく、事業計画に基づく経営をしてもらって日本全体の経済成長を促したい。というのがあるようです。
しかし、税理士の個人的感覚だと、家族経営の同族会社やひとり社長の会社に、事業計画書の実行は難しいのではないかと思っています。
そこで、中小企業に事業計画書が向かない理由を考えてみました。あくまで私見ですので悪しからず。
1年先も予測できない
事業計画書は、現在の課題を洗い出し、そこから5年後の未来の目標を設定し、それを数字を使って損益計算書に反映します。
当然ですが、損益計算書の予測利益は、1年目よりも2年目が大きくなり、5年後は設定した利益にとなります。そりゃ事業計画書は予測なのでなんとでもなります。
しかし、実際の経営は上手くいく方が稀で、中小企業や個人事業は翌月の仕入代金や家賃、従業員の給料を確保するために、日々の営業を頑張っているわけで、1年後の予測すら立てられないのが実情です。
事業計画書で5年後の経営を予測するのは、もはや夢物語に近いものがあります。
経営者自身と家族の要素が大きい
数年後の予測が立てられない理由として、家族経営の同族会社や、アルバイトがいるだけのひとり社長の会社、飲食店や美容室などの個人事業主は、経営者自身とその家族の影響が大きすぎるという点があります。
経営者自分やその家族が病気や怪我をすると、営業ができなくなってしまうこともあります。
また、こどもが高校や大学に進学すると、入学金など多額の学費が発生します。
規模の大きい中小企業や大企業であれば、それは個人の問題として会社に影響を及ぼすことはなくても、個人事業主や小規模事業者だと、家族の問題が事業そのものに影響することがよくあります。
市場の変化が激しい
さらに、市場の変化が早すぎるというのも、未来の予測ができない理由の一つです。
携帯電話からスマホに変化してからは、便利なアプリやサービスが次々と登場し、今まで新製品だったものがすぐに古くなります。
企業のライフサイクルも短くなっているため、流行に乗って新規事業を立ち上げても、3年後には姿を消していることもよくあります。
資金力があり体力がある大企業であれば、流行に乗って早期出店し、数年後に早期撤退しても企業の存続には影響ないと思いますが、資金繰りがきびしい小規模事業者はそうはいきません。
なぜなら、失敗すれば倒産や破産が迫ってくるため、慎重にならざるを得ないからです。
事業計画書を作成するメリット
では、事業計画書を作成する意味はないかと言えば、そうではなく国の制度を活用するという点ではメリットがあります。
機械や設備投資をする場合に固定資産税の免除や減価償却での優遇、新規事業を立ち上げる際の低金利での融資などです。
これらの制度を利用するために、事業計画書を作成して、国の認定を受けることにはメリットがあります。
中小企業庁では、経営力向上計画という名前ですので、興味のある人はチェックしてみてください。
[参考ページ]
引用│中小企業庁ホームページ
