東野圭吾の「祈りの幕が下りる時」を読みました。
本作は加賀恭一郎シリーズの最新話で、加賀恭一郎が日本橋署に異動を希望した理由が明らかになります。
このシリーズは「卒業」から始まり、10作も続く人気シリーズですが、自分が実際に読んだのは「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」だけになります。
映画化もされていて、それは全て鑑賞しているのですが、阿部寛がはまり役過ぎて、小説を読んでいても脳内で阿部寛の声が再生されるほどです。
シリーズ途中から読み始めても、1作ごとにミステリー小説として完結しているので、楽しめます。
もちろん本作も楽しめますが、これでシリーズ完結なのかと思うと一抹の寂しさがあります。
あらすじ&感想
幼なじみである舞台演出家に会いに来た女性が、古びたアパートの一室で遺体となって発見された。
そのアパートの持ち主は行方不明で見つからない。
事件を担当した松宮は、生きる気配が感じられないアパートの雰囲気から、近くで起きたホームレスの焼死体の事件との関連を疑う。
松宮は、遺品の中にあった日本橋を囲む12の橋の名前が書かれたカレンダーについて、従兄弟であり日本橋署に勤務する加賀に助言を求める。
しかしそのカレンダーのことを知った加賀は激しく動揺する。
なぜならそれは、仙台で孤独死をした加賀の母親の遺品にも、同じものがあったことに気づいたから。
加賀は、そのカレンダーが事件の解決のヒントであり、自分の母親の秘密に繋がると考え、捜査本部とは違うルートで事件の解決へと進んでいく。
加賀は、人の心を読む洞察力と、剣道で鍛えた持ち前の根性で、じょじょに犯人像を明らかにしていく。
そして事件の真相が明らかになることで、犯人の壮絶な過去と、加賀自身がずっと追っていた母親の死の真相が明らかになる。
読後感は、ラストの犯人の手紙部分が、東野圭吾作品のやるせない感じが残ります。(「手紙」は是非読んでほしい!)
ミステリー小説としてはよくできていてきれいですが、衝撃度は「容疑者Xの献身」には及ばないかなと思います。
どちらかと言うと、シリーズを通して散りばめていた伏線や謎を、全て回収してきれいに完結させるための作品だったのかなと思っています。とは言え終わってほしくないシリーズです。
なお、このシリーズは小説で読むのと同じくらい、映画でも鑑賞したい作品です。なによりも阿部寛がはまり役ですから。