雑誌やビジネス本でたまに見る「AIの影響で10年後に消える職業」には必ず税理士が入っています。
この記事は、オックスフォード大学のAI研究の先生が発表したものが根拠となっています。
当初は「マジッ!?」と焦ったものですが、よく考えると「税理士の仕事をちゃんと理解して言ってるの?」とか「税金のシステムが違う外国と日本を十把一絡げで言っていいの?」という疑問が出てきました。
そこで、イメージ先行でよくわかっていないAIについて勉強しようと関連本を数冊読んでみました。
その結果、税理士の仕事と現時点のAIが「できること」「できないこと」を自分なりに考えてみました。
AIが「できること」「できないこと」
AI関連本のなかでも読みやすくわかりやすかったのが「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」です。
AIで東大合格を目指す「東ロボくん」プロジェクトディレクタの新井紀子氏の著書です。
この「東ロボくん」は結果として東大合格ができなかったのですが、その理由として現時点のAIの限界点が書かれています。
AIは、膨大なデータを分析する能力(ディープラーニング)は得意だけれど、文章から包括的な意味や文脈を理解することは現時点ではできないようでした。
そのため、国語や英語といった読解力を必要とする科目で、得点を伸ばすことができなかったようです。
この「できること」「できないこと」を税理士に当てはめてみました。
AIにできる税理士の仕事
基本的に税理士の仕事は税金を計算することです。
税金という最終結果を出すために、顧客と相談や打合せをし、領収証や請求書から日々の取引記録を帳簿に記録しています。そして最後に帳簿と最新の税法を照らし合わせて申告書を作成し税金を計算します。
この流れの中で、AIにできることを考えると、日々の記帳業務はAIでもできると思います。
お得意のディープラーニングを使えば、過去の膨大な仕訳データから適切な勘定科目を選んでくれそうです。ただし、たまにしか出てこない領収証や判断力が問われる資料は、AIには意味を読み取れないことが予想されます。
さらに、申告書の作成については、帳簿や給与計算のデータが完成していれば、最新の税法から自動で正確な税金を計算できるはずです。
人間であれば転記や特例の判断で凡ミスが起こる可能性がありますが、計算に関してはAIに凡ミスはないはずです。
AIにできない税理士の仕事
逆にAIにできない税理士の仕事を考えると、まず顧客とのコミュニケーションが考えられます。
ちなみに、スマートスピーカーやSiriは、基本的に音声認識によって聞かれたことに対して答えているだけなため、顧客の要望を考えたり、顧客の状況から役立つ情報を提案する税理士のような仕事とは全く違います。
さらに記帳業務も、資料を読み解く読解力が必要となるため、AIに任せれば完ぺきというわけにはいかないはずです。
例えば、顧客との飲食費の領収証は「接待交際費」として経費になりますが、従業員ではない家族との飲食代は経費になりません。このように読解力がないAIには、一枚の領収証から経費を判断することは難しいはずです。
まとめ:AIは万能ではない
AI関連本を数冊読んでみて、AIにできる税理士の仕事とできない仕事について考えてみました。
考えてみると、顧客とのコミュニケーションや、判断が求められる入力業務はAIには難しい。ということに気づきました。
オックスフォード大学の先生もAIに代替されない職業として「介護士」や「医師」などコミュニケーションが必要な職業を挙げているため、アナログな業務のほうがAIに強いのかもしれません。
逆に、AIにできる仕事は、税金の計算や単純な仕訳入力など、知識だけで完結する業務。と考えられます。
これからの税理士は、AIに負けないように、ハイテクよりもアナログな方に変化していかなければならないのかもしれません。
さいごに、10年後にAIで税理士が消えるなんて。日本の税理士の仕事を知らない外国の先生が書いたんだから根拠は薄いと思いますね。