宮下奈都(みやしたなつ)『羊と鋼の森』を読みました。
第13回本屋大賞の受賞作で、その他にも多くの賞を受賞した作品です。
さらに2018年6月に映画化もされる話題作です。
文章が美しく読んでいて癒やされる作品でした。読後感も清々しく多くの人に読んでほしい一冊でした。
あらすじ&感想
森がある山で育ち、具体的な夢もない高校生の外村(とむら)は、偶然体育館のピアノを調律しに来た調律師をきっかけにしてピアノ調律師を目指す。(正確には調律したピアノの音色がきっかけです)
都会の専門学校を卒業した外村は、目指すきっかけとなった調律師がいる楽器店に入社する。技術がないことに焦りながらも、日々の訓練と先輩調律師の指導もありゆっくりと成長していく。
都会とは言えない街の楽器店で、顧客のピアノを愛している和音と由仁の双子、調律師を目指すきっかけとなった恩師である板鳥さん、ロックバンドでドラムを担当するピアノ調律師の柳さん、ぶっきらぼうで棘があるけれど腕は一流の秋野さん、いつも優しい事務員の北川さんたちと過ごす、代わり映えしない、けれど美しい日常を描いた作品。
読んでいて気持ちのいい作品でした。
文章が丁寧で美しく、それでいて心に響いてくるものがあります。
登場人物の柳さんがとても気に入っていて、どこか軽い感じがするのに、仕事は丁寧で、しかも完ぺきな人間でないことも人間味があります。(伊坂幸太郎『チルドレン』の陣内に通じるものを感じました。)
映画もチェックしたいと思いました。
さいごに心に響く一節があったので紹介します。
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」