原田マハ『暗幕のゲルニカ』を拝読しました。
同氏の作品を読むのは『楽園のカンヴァス』『キネマの神様』に続いて3作目になります。
現実にある美術作品を題材にしたミステリーという。今まで自分が読んだことのないタイプの小説を書く作家さんでとても大好きです。
今回の作品もピカソの有名作品を題材にしたミステリーです。
あらすじ&感想 ※ネタバレあり
時代は、アメリカ同時多発テロ事件が発生した2001年と、ピカソが現役の画家だった1930年代から1940年代の頃の話が並行して進みます。
スペインのゲルニカが空爆されたことをきっかけに描かれ、その後第二次世界大戦など反戦のシンボルとなったピカソのゲルニカという作品。
時代は変わり、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけに、アメリカは国連の決議を待たずに空爆に踏み切る会見を行います。しかしこの会見会場となった国連に掲げられていたピカソのゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられる。という事件が発生します。
一方、MoMAのキュレーターにしてピカソ研究の第一人者である八神瑤子は、同時多発テロをきっかに反戦をテーマにした美術展を企画します。
アメリカ同時多発テロ事件そして暗幕のゲルニカをきっかけにして、過去のピカソと連動しながら八神瑤子の運命が回り始めます。
ミステリーとして、またサスペンスとしても楽しく読める作品でした。
ダヴィンチコードなどのように映画化してもおもしくなるような作品です。
内容は史実を引用したフィクションですが、ある程度真実も織り交ぜているため、戦争中の時代背景やピカソの人物像が見えてきて勉強にもなります。
『楽園のカンヴァス』を読んだときも感じましたが、今作も原田マハ作品を読むと、美術の専門家になった気になり、実際にルソーやピカソの作品を見たくなります。
実際に、この作品を読みつつ、ピカソについてネットで検索してしまいました。
青の時代やバラの時代、キュビズムやシュルレアリスムなど専門的な知識を得ることで、ヘンテコな絵を書くおじさんというピカソの誤った認識を少し改善できただけでも、この作品に感謝しなければなりません。
ありがとう原田マハさんm(__)m
今度は、写楽や葛飾北斎など日本の浮世絵を題材にした作品も読んでみたいです。