平成29年分の確定申告から医療費控除が大きく変わりました。
1.医療費の領収証の提出(提示)が不要となりました。
※5年間自分で保存
2.医療費控除の明細書の提出が必要となりました。
※医療費の通知でも可能
3.セルフメディケーション税制が開始しました。
※従来の医療費控除との有利選択
細かい制度は国税庁のHPで確認してほしいのですが、今回のブログの趣旨は、この医療費控除を廃止しませんか?というものです。
なぜこんな極端なことを言うかと言えば、僕は確定申告の無料相談を毎年しているのですが、会場を観察していると、医療費控除という制度が「高齢者」「税理士」「税務署の職員」「日本」のすべてを不幸にしているのではないかと思ったからです。
医療費の膨張が日本を壊す
日本の医療費は厚生労働省の資料によると、平成28年度で41兆円となり40兆円を超えました。
高齢者が増加する日本では仕方のないことなのかもしれませんが、現役で働く世代の健康保険料の負担は年々増加して、誰のために働いているのかわからないほどです。
しかも、高齢者の医療費の負担は1割から2割と現役の3割負担と比べてかなり優遇されています。
そんな現状において、さらに医療費控除を受けることで、税金を還付をしなければならないのが現在のシステムです。
世代間の不公平を感じてもおかしくないと思います。
社会保険診療の医療費は対象外にすべき
医療費控除を廃止した方がいい理由として、そもそも社会保険診療の自己負担額は1割から3割となっていて、患者の負担は支払時点で既に減額されているからです。
さらに日本では、高額療養費制度があり、1ヶ月の医療費負担が上限を超えると、その超えた分が支給されます。
このように日本の医療制度はかなり優遇されているのにかかわらず、さらに医療費控除で税金を還付する必要があるとは思えません。
医療費控除は廃止してセルフメディケーション税制のみにすべき
医療費控除を廃止する代わりに、創設されたセルフメディケーション税制を拡充すればいいと思います。
セルフメディケーション税制とは、ドラッグストアで購入した風邪薬や胃薬など特定の薬(スイッチOTC薬)や健康診断の費用を対象にした所得控除制度です。
セルフメディケーションの費用が上限を超えると、その分が所得金額から控除できる制度です。
これまでの医療費控除を廃止し、セルフメディケーションのみにしても、日本の医療制度は十分患者に優しい制度のはずです。
高齢者の確定申告の負担を減らすべき
税理士として確定申告の無料相談をしていると、高齢者が大量の医療費の領収証を抱えて会場に来ます。
中には、杖をついて歩くのも大変そうな高齢者や、車椅子を引かれてやってくる高齢者もいます。
「1日かけてまとめたよ。」という分厚い領収証で申告した結果が、数百円から数千円の還付だったりします。
そりゃ自己負担1割なら、領収証の量は増えても、還付なんてたかが知れていると、税理士なら判断できます。
しかし高齢者は細かい計算が苦手なため、とりあえず合計すれば還付できるという認識です。
このような確定申告イベントは、申告する高齢者も、対応する税理士や税務署の職員も疲弊させるだけだと、毎年感じます。非効率極まりない!
人手不足と税務署の効率化
人口減少の日本では、税務署でも人手不足という事態に面しています。
平成29年度の改正で、医療費控除が明細書の添付になったのもその影響があるはずです。
そのような状況で、わずかな還付を受けるためだけに、会場で高齢者を並ばせたり、土日にも関わらず連日勤務する税務署の職員は、お互いに不幸でしかありません。
働き方改革というのであれば、こんな非効率な制度はすぐにでも見直すべきだと思います。
さらにマジメに対応している職員に罵詈雑言を浴びせている高齢者を見ると、かわいそうで仕方ありません。
まとめ
医療費控除の廃止について考えてみました。
極端のことを言っているのかもしれませんが、現場を見ている立場としては、現状に違和感を覚えずにはいれません。
医療費控除が一体誰のための制度なのかと思ってしまいます。
これからさらに高齢化が進むと思うと少しぞっとします。まぁ政治家や役人は我関せずでしょうが。