個人事業主の皆さんは、どんな会計ソフトを使っているでしょうか?
弥生会計?freee?マネーフォワード?会計王?それとも別の会計ソフトでしょうか?
最近はPCにインストールせず、オンライン上で会計処理をするクラウド会計が人気です。
しかし、問題点や危険性もまだまだあるのがクラウド会計のデメリットです。
そこで今回の記事は、クラウド会計のデメリットについて紹介しようと思います。
というのも自分がクラウド会計で痛い目を経験をしたからです。
これから個人事業を開業したり法人を設立して会計ソフトを導入しようとする事業主は、参考にしてみてください。
会計データの消滅
クラウド会計の危険性でまず思いつくのが、データ管理の難しさです。
会計データとなる帳簿は、平成28年の税制改正で法人の帳簿の保存期間が9年から10年に延長されました。
本来は、税務署に電子帳簿の申請をしていないと紙の帳簿保存が義務となりますが、中小企業の中には、クラウド上で会計データを保存している法人もあると思います。(ダメだよ)
そんなときに、重要な会計データをクラウド上に保存することが、本当に安全なのかという問題です。
10年という長期間の中で、クラウドデータを管理している会社が倒産せずに継続しているでしょうか?
10年間データが消滅しない保証はあるでしょうか?第三者による改ざんや流出の危険性はないでしょうか?
このような問題は今後より表面化することが予想されます。
現時点では、紙で出力して保存し、さらに別媒体でバックアップをしておくことが重要です。
[参考ページ]
タックスアンサー№5930│国税庁ホームページ
クラウド会計会社の倒産・精算
次は、クラウド会計の経営母体となる法人の事業継続についての危険性です。
クラウド会計の会社が倒産や会社精算、事業譲渡される可能性もあり、その際にユーザーが置き去りにされる可能性です。
クラウド会計の大手といえば、「弥生オンライン」「freee」「MFクラウド会計」の3つがあり、その他に「A-SaaS」などがあります。
このうち、弥生オンラインを提供している弥生会計は、オリックスグループに買収されて財務基盤は比較的安定していますが、その他のクラウド会計を提供しているIT系企業は、軒並み数十億円規模の赤字を毎期計上しています。
これらIT系企業の戦略を簡単に説明すると、まずベンチャーキャピタルから資金調達して会計システムを開発します。
そして大規模な広告と無料戦略を使って市場のシェアを奪っていきます。
初期の財務状況は大赤字でも、シェアを確保し上場して株価を吊り上げることで初期投資を回収する。というのが基本的な戦略です。
この戦略が上手く行けば問題ありませんが、ほとんどが失敗して大赤字なのが現状で、今後の状況次第では会社が消滅することも考えなければなりません。
クラウド会計を使用するユーザーは、これらIT系企業の無謀な戦略に付き合わされることになります。
なぜなら、会計システムは一旦導入すると変更がなかなかできないからです。
ユーザーは、導入前にその会社の財務状況を確認し、企業が継続できるか検討する必要があります。
料金の高さ・値上げ
クラウド会計の利用料金は、数千円から数万円の月額制となっています。
なかには最初の1年無料というところもありますが、これは通信利用料と同じで一旦契約すると変更しづらいことを前提とした戦略です。
ユーザーは、初期費用の安さから導入したにもかかわらず、急に値上げを通知されるケースもあります。
企業側は、「利用規約に書いてあるから。」と言いますが、ユーザーはたまったものではありません。
このような問題が起きる理由は、新興のクラウド会計はシェアの確保を優先するあまり、無料戦略など過剰な値引きをしているからです。
ユーザーは、契約時に利用規約を読み問題点を確認したり、上述の通り有価証券報告書などで企業側の財務状況を確認する必要があります。
A-SaaSの評判│税理士が実際に使ってみた感想
さて、ここまでクラウド会計の危険性・デメリットを紹介してきましたが、これはほぼ自分の経験をまとめたものです。
自分はA-SaaS(エーサース)という会計システムを導入しました。
A-SaaSのメリットは、会計事務所が会計システムの親アカウントを有料で取得すると、子アカウントで顧問先が同じ会計システムを無料で導入できることです。
コンセプト自体は確かに良いのですが、実際に使ってみると困る場面が頻出します。
ネットに接続したオンラインで作業するため「スピードが遅い」「フリーズする」ということがあります。
仕訳が多いと、一つひとつの仕訳の登録に時間がかかり、入力作業にいつもより時間がかかります。
さらにシステムが不安定なのか、画面がフリーズしてしまうことが頻出します。スピードが遅い上にフリーズするとイライラが募ってきます。
しかし一番の問題は、電子申告の途中でフリーズして作業がストップしてしまうことです。期限ギリギリで申告するときに、電子申告ができない事態になり危うく期限後申告になりそうでした。
広告やホームページでは、聞こえの良い宣伝を並べる割に、いざ導入すると問題だらけで驚きました。
これらの問題点は、どのクラウド会計にも言えることかもしれません。(A-SaaSだけが酷いのか?)
さらに、上述のとおりクラウド会計は財務基盤が不安定なのが問題です。
A-SaaSとは、当初は3万5千円の初期費用を30万円にすることで、その後の月額利用料を1万円に値引きするという条件で契約しました。
しかし、わずか1年後に月額利用料を3倍に値上げすると通知してきて、しかも初期費用も返還しないというものでした。
A-SaaS側の言い分は、赤字の財務状況を改善したい。そして利用規約に書いてあるから問題ない。というものでした。
契約時はずっとに1万円で使えると良いことだけ言って契約を迫ったにも関わらず、その内情は火の車で、ほぼ計画通り1年後に値上げする流れだったようです。
事業をやっているなら赤字のリスクは当然ありますが、それは起業内部の問題で、契約を無視してまで値上げ(しかも3倍)することに驚きました。
逆の立場で、会計事務所が赤字のときは、A-SaaSの利用料を値下げしてくれるのでしょうか?(絶対にそんなことはありません。)
そこで初めてA-SaaSの有価証券報告書を見ると、10億円規模の赤字を設立以来毎期計上している火の車の企業でした。
また、企業ホームページの利用規約を見ると、確かに値上げ条項があります。さらに利用規約をA-SaaS側がユーザーの同意なく自由に変更できる規約もありました。
A-SaaSが、まさにやりたい放題の企業だったのです。何も調べずに契約した自分がアホでした。
A-SaaSは設立時に投資ベンチャーから出資を受けた数十億の資金を、お客さんを集めるのに使い、本来お金をかけるべきシステムの安定性にお金をかけてこなかったことがわかりました。
これからは、まず信用ではなく疑うことから始めようと思います。そしてこれから契約するユーザーも注意して欲しいと思います。
この記事を書いている頃は、振り袖詐欺の「はれのひ」騒動があった頃で、高額な前金や振り袖が返却されない報道を見ていると、自分のことのようにやるせない気持ちになります。
過去を振り返れば、「てるみくらぶ」も同様の詐欺事件であり、消費者は常に企業の傲慢な態度に振り回されるのかもしれません。
まとめ:クラウド会計の裏の顔を知ろう
自分の経験を踏まえて、クラウド会計の危険性とデメリットをまとめてみました。
すべてのクラウド会計が同じとは限りませんが、財務状況から考えるとほぼ同じと予想できます。
今後クラウド会計を導入する事業主の皆さんは、シェアNo.1や無料という甘い言葉に騙されないことを切に望みます。
そして、タレントを使った派手なCM、大赤字の財務状況、やりたい放題の利用規約などクラウド会計の裏の顔を契約時に確認してみましょう。
そしてクラウド会計を提供する企業は、上場や買収で利益を出そうとするマネーゲームではなく、ユーザーのために、まっとうなビジネスを展開して欲しいと思います(泣)