百田尚樹『幻庵』を読みました。読み方は『げんあん』ではなく『げんなん』です。
自分は囲碁のルールも知らない素人です。
井山棋士が7冠を制覇したことや、アルファ碁が現代最強棋士に勝ったことを知っている程度です。
それでも、読んでみようと思ったのは、百田尚樹が描く小説なら面白いはずと思ったからです。
『海賊とよばれた男』『永遠の0』『黄金のパンタムを破った男』などに通じる熱い物語が期待して読みました。
そして実際に読んでみると、ルールは分からずとも、やはり熱い物語で素人でも十分楽しめました。
感想
主人公は、江戸時代に活躍した幻庵という囲碁棋士ですが、物語は幻庵が生まれる前の名人や師匠の生い立ちから始まる長いものです。
上巻と下巻に分かれていますが、上巻は囲碁の歴史や基本的なルールが、幻庵の成長とともに紹介されています。
下巻は幻庵が名人碁所を目指しながら、他の家元と盤上そして盤外での激しいせめぎあいの様子が描かれています。
作中には、囲碁の対局が何局も描かれていて、囲碁の用語が出てくるため、ルールを知らない人にとっては難しいと思うかもしれませんが、全くそんなことはなく逆に知らないこそ熱い戦いが伝わってきます。
ヒカルの碁という漫画がありますが、あの作品も結局ルールが分からずに、多くの読者を獲得したのと同じです
読後の感想としては、囲碁は難しすぎる!と言うものでした。
将棋のルールは知っていますし、楽しくも感じますが、囲碁は将棋に比べて柔軟性がありすぎて素人では、その魅力を理解するのに時間がかかりすぎる。と思いました。
しかも、江戸時代の碁には、制限時間がないため、一手に2時間掛けることもあり、長いときは6時間もかけていたそうです。しかも返しの一手にも6時間かけるので合計12時間!
今は制限時間がありますが、江戸時代の棋士は読めるだけ読んで打つことで、最強の一手を打っていたことがわかります。
そのため、現存する棋譜には、現代の棋士が見ても驚くものがあるそうです。痺れます!
囲碁の世界の奥深さ、棋士がどれだけ命を削って囲碁に人生を掛けていたかが良くわかります。
天才と呼ばれながらも、結核などの病気で亡くなった棋士が数多く登場します。
囲碁の世界を少し覗けただけでも、この作品を読んだことに価値を感じました。
お気に入りの棋士は知徳です。