辻村深月『鍵のない夢を見る』を読みました。直木賞を受賞した短編集です。
女性を主人公にした5つの短編集で、一つひとつの話は50ページでサクサク読める作品ですが内容は重いものでした。
あらすじ&感想
5つの短編のタイトルとあらすじは以下のとおりです。個人的には石蕗南地区のモヤモヤ感が好きでした。
「仁志野町の泥棒」泥棒癖のある同級生の母親、同級生との友人関係は続くのか?
「石蕗南地区の放火」婚期を逃した男女のグチグチした思いが、火事を通して燃え上がる?
「美弥谷団地の逃亡者」単なるリゾートビーチへのデートの裏には、とんでもない事実が隠されていた。
「芹葉大学の夢と殺人」大学で現実を見ずに夢を語る男と出会い、ズルズルと関係を続ける女の選ぶ結末とは?※推理作家協会賞短編部門候補作
「君本家の誘拐」待望の赤ちゃんの誕生。しかし完璧主義の女性と上手く行かない現実とのギャップのなかで、ベビーカーごと赤ちゃんが消えてしまう。
辻村深月氏が女性ということもあり、女性の心情描写がとても繊細です。全ての短編を通して、派手なアクションや、とっておきのミステリーがあるわけではありませんが、主人公の女性とその周辺で起こる様々な事態に、否応なく振り回される女性の心情が描かれています。
女性が楽しめる作品だと思いますが、男でも興味深く読むことができました。