相続税の申告件数が増えています。この理由はハッキリしていて税制改正で基礎控除が下がったためです。
具体的には、平成26年は約5万6千人が相続税の申告書を提出しましたが、改正後の平成27年は約10万人と前年比の2倍近くとなりました。
増える相続税の申告件数に比例して、もめる相続も増えています。区役所や税理士会の無料税務相談をしていても相談の8割は相続税についてです。そんな中で、よく聞くようになったのが『ハンコ代』です。
そこで、『ハンコ代』を原因とした『もめる相続』の2つのパターンを紹介します。
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遺産分割の主導者から求めるハンコ代
相続でよく聞くハンコ代のイメーとして多いのが、『遺産分割の主導者から求めるハンコ代』ではないでしょうか。
現在の遺産分割の制度は、相続人は相続分に応じた権利(法定相続分)がありますが、かつては長男など(家督を継ぐ人)に全ての遺産を相続させる家督相続という制度でした。
その考えが残っているのかもしれませんが、分割協議を長男がどんどん進めて、他の兄弟姉妹には一定の遺産を相続させる代わりに、遺産分割協議書に印鑑を押すように求める行為があります。この一定の相続分がハンコ代に相当しますが、このハンコ代が法定相続分に比べて著しく低いことで、もめる相続に発展します。
遺産分割の弱者から求めるハンコ代
逆パターンとして、遺産分割書に対して納得がいかない相続人が、一定のハンコ代を要求する行為もあります。
遺産分割協議書を作成すると、その書類を使って金融機関や証券会社の名義を変更するため、相続ではとても重要な書類となります。
相続税の申告でも必要(遺言書があれば不要)なため、相続人による押印がないと申告できません。そこで相続人の中でも遺産の相続分が少ない人が、一定の相続分を要求することがあり、その相続分がハンコ代に相当します。
まとめ:ハンコ代もいろいろ
相続でよく聞くようになったハンコ代について紹介しました。
単純にハンコ代と言っても、パターンとしては2つあります。どちらにしても『もめる相続』に発展する可能性があります。
また、『ハンコ代』を原因とした『もめる相続』は、資産が多い富裕層ではなく、相続税の基礎控除額をギリギリで越えるような世帯に多い印象です。
このようなことが起きないようにする対策としては、被相続人が生前に遺言書を書いておくことなのかもしれませんが、遺言書を巡るトラブルも多いと聞くので何とも言えません。業務上、税理士は分割協議の仲介には介入できないため、弁護士や家庭裁判所に頼るしかないのが現実です。