美容室の開業で悩むものの一つとして、『法人』と『個人事業主』のどちらにすべきかという問題があります。
そう相談されたときの税理士としての対応は、それぞれのメリットとデメリットを説明して、オーナーさまに最終判断をしてもらいますが、その説明の中に社会保険と求人があります。
そこで、社会保険と求人募集という側面から見た美容室の法人と個人事業主の違いについて紹介します。これから美容室の開業を目指すオーナーさんは、この記事を参考にしてみてください。
美容室でも法人にすると社会保険は強制適用
個人事業主として美容室を経営する場合、社会保険(厚生年金と健康保険)は『任意適用事業所』に該当するため、従業員が5人以上いても社会保険にへの加入は任意となります。(加入しようと思えば加入できます)
しかし、法人として開業したり法人成りすると、1人でも従業員がいると『強制適用事業所』となり社会保険へ加入する義務があります。
資金繰りでの社会保険のデメリット
社会保険に加入しても、給与から天引きした社会保険料を納めるだけだから店舗の負担はないと思っていませんか?
実は法人として社会保険に加入すると、従業員の社会保険料の半分は法人が負担することになります。従業員からは給与支給時に社会保険料の半分を天引きし、もう半分を法人が負担して合計額を月末に納付します。(労使折半)
個人事業主であれば、給与を支払うと、従業員自身が給与から国民年金と国民健康保険を支払っていましたが、法人になると社会保険料の半額負担と、徴収と納付という事務負担も発生します。これが社会保険の加入デメリットです。
求人募集での社会保険のメリット
経営者から見ると資金繰りでデメリットになる社会保険への加入ですが、美容室で働こうとする若い従業員から見ると見方が変わりメリットになることがあります。
社会保険へ加入することで、人口減少が進むなかで人材確保が難しくなりつつある美容業界で、求人欄に福利厚生完備と記載できるメリットです。
個人事業主が7割以上を占める美容業界で、厚生年金と健康保険に加入している美容室は、他の美容室との差別化になります。もちろん手取りが多い方が良いという人は求職しない可能性もありますが。
まとめ:社会保険は資金繰りと求人のバランス
美容室の個人と法人で違う社会保険の制度を、資金繰りと求人募集の2つの視点でまとめてみました。
資金繰りを悪化させることは難しいけれど、手厚い福利厚生を用意しないと人材の確保が難しいという矛盾があります。
そこで、個人事業として開業し、資金繰りをみながら軌道に乗ったタイミングで法人成りし、従業員を増やして店舗を成長させていくというのも一つの手段かもしれません。
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