会計事務所のなかには経営分析に力を入れているところがあります。
毎月の試算表の他に、勘定科目ごとの内訳明細や損益推移表、キャッシュフロー計算書、前年同月比など経営分析に必要な資料です。
自分が以前勤めていた会計事務所も上記の資料を毎月作成していました。しかし、顧問先さんにとっては、これらの資料がただのゴミでしかありませんでした。
会計事務所は良かれと思って作成している資料が、顧客にとっては必要ないという現実。このズレの原因を考えてみました。
経理と税務申告で充分な顧客側
顧問先が会計事務所に期待することを考えた時に2つの面があると思います。
一つは、事業を続ける上で絶対に必要となる「経理」「税金の申告」について、経営者自身ではできないために、専門家である会計事務所に外注したいという考えです。
もう一つは、事業を大きく成長させたい。または事業を早く軌道に乗せたい。という目的から会計事務所に「経営サポート」を求める考えです。
日本の経済が右肩上がりのバブルの頃は「経営サポート」を期待する経営者が多かったようですが、経済成長が鈍い現在の日本では「経理」「申告」という最低限のサポートを期待する経営者が増えてきました。
しかし、バブルを経験した60代以降の税理士には、いろいろな資料を作成し、説明することによって経営をサポートしている。ということに満足感を得ているケースがあります。
サービスの付加価値を上げたい会計事務所
デフレ経済は会計業界も同じで、一つの顧問先からもらえる顧問料の単価は減っています。
顧問料が減ったときの対処法としては、一つは顧客の数を増やす。もう一つは顧問料を上げる。のどちらかです。
しかし、顧客の目線に立つと、顧問料を上げるという方向性がズレているような気がします。
税理士向けのコンサルタントは顧問料を増やす。というセミナーや商材を売っていますが、この考え自体が顧客の目線とズレているような気がします。
新規案件を獲得できない会計事務所ほど、既存の顧問先に対して経営分析による付加価値の高いサービスを提供し、顧問料を上げる方向にあります。
経営分析を勉強していない会計事務所
会計事務所のメインのサービスは、やはり「経理」と「税務申告」です。
経営分析の勉強をしていない税理士の方が多いのが実情です。まして会計事務所に勤務する職員は税金について専門学校で勉強中の人が多いので、経営分析などもってのほかです。(中にはできる人もいますが…)
そんな会計事務所が作成する経営分析の資料について、役に立つのかと疑問に思うことがあります。
同じように、試算表を読めない経営者が、さらに難しい経営資料を見せられても役に立つことはあるのでしょうか。
まとめ:自分の目的にあった会計事務所を探す
会計事務所と顧客のサービスの考え方のズレについて考えてみました。
これから事業を開業する経営者は、会計事務所や税理士は当然必要になってくると思います。
会計事務所が必要なときは、顧問料や場所だけで決めずに、どのようなサービスを提供してくれて、そのサービスが自分に必要かどうかで決めてみてはいかがでしょうか。
かく言う自分も、以前に勤務していた会計事務所で、必要とされないキャッシュフローや推移表を作成することに労力を割いていました。
独立してからは、契約時に顧客と面談し、お互いに必要なサービス内容と顧問料を相談し、ウィンウィンの関係を築くようにしています。
